第19回:【実践編 一括投資の論理】「恐怖」を買い場と捉える ~客観的指標とマインドセット

資産運用

第16回では、米国株を中心とした投資信託を自動積立購入設定して、手間を掛けずに且つタイミングを図らずに購入していく方法についてお話ししました。

※第16回の記事はこちら:意志力を使わない「自動最適化」:クレカ積立によるインデックス投資の加速術

今回は、株式投資を開始したタイミングや、まとまった現金が入った時に、毎月の積立投資とは別に「一括での購入をどうするべきか?」という点について深掘りしてみたいと思います。

分散投資(銘柄・時間)と長期保有が最強の再現性を持つことは不変の真理ですが、手元にキャッシュがある場合、いつ、どのような基準で動くべきか。 私自身の判断基準を含め、戦略的にリスクを取る場合の「指標」をご紹介します。

「右肩上がり」の裏にある波動を捉える

米国株インデックスは、中長期的には右肩上がりで上昇していく可能性が極めて高いものです。

 参考記事:第13回【米国経済の覇道】暴落の歴史は「システムの進化」 投資家が知るべき最適解とアノマリー

そのため、基本スタンスは「時間を味方につけたドルコスト平均法」で間違いありません。

その理由は、既にご説明の通り、指数は一本調子で上がる訳ではなく、様々な要因によって激しい上下を繰り返すためです。

従い、上げたときも下げたときも、同一の額で購入していくことで、その平均点を取っていく、というのが前者の戦略ですが、中長期で保有する前提であれば、この「下げたタイミング」でより多くの口数を仕込むことができれば、将来の評価額に大きな差がつきます。

「正しいタイミング」を完璧に当てることは不可能ですが、いくつかの客観的な指標を確認することで、「今が相対的に安いのか、高いのか」を推測することは可能です。

KEN
KEN

あくまでも基本戦略は分散・長期での積立。今回お話ししている一括での投資戦略は、あくまでこの長期分散積み立てを実行している上でのお話となります。

相場の「季節」を見極める:強気相場と弱気相場

まず、現在の市場がどのような状態にあるかを把握する必要があります。

  • 強気相場(ブルマーケット): 株価が継続的に上昇し、投資家心理が楽観に包まれている状態。
  • 弱気相場(ベアマーケット): 直近の最高値から20%以上下落した状態。悲観的なニュースが溢れ、多くの投資家が市場を去ろうとします。

投資で得られるリターンが最大化するのは、言うまでもなく「弱気相場」のどん底で買った時です。

また、この相場の季節(サイクル)は「金利」との関係がとても重要になりますので、これはまた別記事で詳しくご紹介したいと思います。

買い場を特定するための「4つの客観的指標」

感情に左右されず、期待値に基づいて一括投入のタイミングを計るための代表的な指標を、いくつか紹介します。

VIX指数(恐怖指数):

米国の代表的な株価指数であるS&P500のオプション取引(将来売買する権利)の値動きから、投資家が予想する「今後30日間の相場の変動幅」を数値化したものです。

  • ロジック: 株価急落の恐怖が高まると、投資家はこぞって「下落に対する保険(プットオプション)」を買いに走ります。保険への需要が殺到して価格(VIX)が急騰した時は、市場が「総悲観」に陥っている証拠です。
  • 目安と実践: 通常時は10〜20の間で推移しますが、30を超えると明確な買い場のサインとなります。歴史を振り返れば、リーマンショック時で約90、コロナショック時で約85まで跳ね上がりました。VIXが異常値を示した時、すでに売りたい人は売り切っており、そこから先の「下落の期待値」は極めて低くなっている(=反発しやすい)と判断します。

Fear & Greed Index(恐怖と強欲指数):

CNNビジネスが毎日無料で公開している、市場のセンチメント(心理状態)を0(極度の恐怖)から100(極度の強欲)のメーターで示す指標です。

  • ロジック: 単一のデータではなく、「ジャンク債への資金流入」「株価のモメンタム」「安全資産(国債など)への逃避需要」など、性質の異なる7つの市場データを合成して算出されています。そのため、市場全体の「温度感」を測る上で非常に信頼性が高いのが特徴です。
  • 目安と実践: メーターが25以下の「Extreme Fear(極度の恐怖)」を指した時が、一括投資の検討タイミングです。誰もが株を手放し、安全な現金や国債に逃げ込んでいるこの冷え切った状況こそ、長期投資家が高いリターン(果実)を得られる可能性の高いタイミングとなります。

Put/Call Ratio(プット・コール・レシオ):

株式市場において、「売る権利(プット)」と「買う権利(コール)」のどちらがより多く取引されているかを示す比率です。

  • ロジック: プット(下落に備える保険)の取引量 ÷ コール(上昇を見込む取引)の取引量で計算されます。つまり、数値が1.0を大きく超えるほど、「これから株価は下がる」と怯え、弱気に傾いている投資家が多いことを意味します。
  • 目安と実践: 全員が下落に備えてプットを買い漁り、レシオが極端に上昇(一般的に1.1〜1.2超)した時は、相場の底打ち(反転)が近いという逆張りのサインになります。プロの投資家たちの間でも、「弱気が極まった時が最高の買い場」というセオリーを裏付けるデータとして使われます。

フォロースルーデイ(FTD):

米国の伝説的投資家ウィリアム・オニールが提唱した、弱気相場の「底打ち(上昇トレンドへの転換)」を判定するテクニカルな手法です。

  • ロジック: 暴落中に株価が反発した日を「1日目」とカウントし、その安値を割らずに耐えた後、「4日目以降」に、前日よりも多い取引高(出来高)を伴って、株価指数が力強く(1.5%以上など)上昇した日をフォロースルーデイと呼びます。
  • 目安と実践: 「出来高が増加して大きく上昇した」ということは、個人ではなく、巨額の資金を持つ「機関投資家(プロ)」が本格的に買いに出動した明確なサインです。下落途中の「騙し上げ(デッド・キャット・バウンス)」を回避し、プロの資金流入を確認してから安全に資金を投入するための、極めて合理的なシグナルとなります。
KEN
KEN

私自身が最も意識しているのは「VIX指数」です。感覚的には40を超えてくる辺りで買い向かえると良いリターンが得られると感じています。滅多に訪れない機会ですが。

結論:誰も買えない時に、自分だけが買い向かえるか

今回の記事で一番伝えたいのは、「市場参加者が皆強気の時に購入しても、得られるリターンは多くないということです。

逆に「誰も株なんか怖くて買えない」という状況の中で、恐る恐る購入できた株こそが、将来の大きなリターンをもたらします。

これは一見簡単そうで、非常に難しいことです。

なぜなら、暴落の渦中では「この世の終わり」のようなニュースが錯綜し、自分だけが孤立している感覚に陥るからです。

周囲の「感情」をノイズとして遮断し、VIXなどの「数値」だけを信じて動く。

この「感情の逆行」こそが、資産の増加を加速させるエンジンとなり、真の自律を勝ち取るためのクリティカルな能力となります。

投資を開始したばかりのタイミングではまず積み立て購入を愚直に継続、その中で市場に参加し続けることで、今の市場がどのような状態にあるのか、その状態を見極め続けていく。

その経験が、いつか訪れる「誰もが悲観的な場面」で株を買い向かいに行けるマインドを醸成してくれるはずです。

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