こんにちは、
前回、第19回では毎月の積立投資とは別に「一括での購入をどうするべきか?」という点についての考え方をご紹介しました。
※第19回はこちら:【一括投入の論理】「恐怖」を買い場に変える客観的指標とマインドセット
その中で、市場に参加し続けることで、今の市場がどのような状態にあるのか、その状態を見極め続けていくことが重要というお話をしました。
今回はこの点をさらに深掘りし、経済のサイクルを理解することで、今の市場の状況を自分なりに把握できるようになるための基礎知識をご紹介したいと思います。
経済を動かす「3つのエンジン」:お金、クレジット、そして心理
経済は一見複雑に見えますが、本質は「買い手」と「売り手」による取引の集積です。
ここで重要なのは、「お金」と「クレジット(借金)」の違いを構造的に理解することです。
- お金: 取引をその場で完結させる決済手段。
- クレジット: 「将来支払う」という約束。現代経済の取引の大半はこのクレジットで行われている。
クレジットが増えると支出が増え、誰かの支出は別の誰かの所得となるため、経済は連鎖的に成長します。
しかし、クレジット(負債)には必ず「返済」が伴います。
この返済の波が、経済の「サイクル(景気循環)」を生み出す正体となります。
政府は財政政策によって、中央銀行(FRBや日本銀行)は「金利」を操作する金融政策によって、この波が大きくなりすぎないよう調整を行っています。
我々投資家は、この波のどの位置にいるかを客観的なデータで捉える必要があります。
金利と株価の「シーソー関係」:中央銀行の意思を読み解く
投資家にとって、中央銀行の動向は「期待値」を左右する最重要項目です。
- インフレ(物価上昇)時:
経済が過熱すると中銀は金利を上げます。
借金のコストが上がり、企業の利益が圧迫されるため、株価には逆風となります。
- デフレ(物価下落)/ 景気後退時:
経済を刺激するために中銀は金利を下げます。
お金が借りやすくなり、投資が活発化するため、株価には追い風となります。
稀に発生する「スタグフレーション(不況とインフレの同時進行)」は、中銀が金利を下げたくても下げられない最悪のシナリオですが、歴史的に見ればこうした困難を乗り越えながらも、技術革新と人口増加によって世界経済は長期で右肩上がりに成長し続けています。

株式投資をおこなう上で、金利の状況把握は必要不可欠になります。大きな変動がないか、定期的なチェックは日米ともに代表的な「10年国債利回り」を確認することが一般的です。
経済の「四季」:サイクルが描く4つのフェーズ
経済には「春・夏・秋・冬」のようなフェーズが存在し、それぞれに適した投資戦略があります。
| フェーズ | 状態 | 株式市場の傾向 | 特徴 |
| ① 回復期(春) | 低金利、景気底打ち | 上昇開始 | 不況を脱し、中銀が緩和的な姿勢を維持。 |
| ② 拡大期(夏) | 景気好調、徐々に利上げ | 強気相場の継続 | 企業業績がピークへ向かうが、インフレも加速。 |
| ③ 後退期(秋) | 高インフレ、急な利上げ | 下落・停滞 | 過熱を抑えるための金融引き締めが市場の重石に。 |
| ④ 不況期(冬) | 景気悪化、利下げ開始 | 底値圏(弱気) | 景気後退が鮮明になり、中銀が再び救済に動く。 |
ここで注目すべきは、「強気相場は長く、弱気相場は短い」という歴史的事実です。
S&P500の歴史を見ても、弱気相場は平均して1年程度で底を打ちますが、その後の強気相場は数年にわたって継続するという特徴があります。
2026年現在の現在地】米国と日本の対照的なフェーズ分析
では、現在の世界経済の現在地をどのように見るべきか。
2026年5月時点の一般的な見解を整理してみます。
米国市場:過熱後の「秋」から「冬」への移行期
米国は、数年に及んだ高金利政策を経て、インフレがようやく安定しつつあります。
- フェーズ: サイクル上の「晩秋(後退期)」から「初冬(不況期)」の境目。
- 状況: 労働市場の冷え込みが進み、FRBが利下げを開始するかどうかの「転換点」にあります。
ソフトランディング(穏やかな着陸)かハードランディング(景気後退)かを市場が固唾を飲んで見守っている状態でしょうか。 期待値としては、一時的なショックのリスクを孕みつつも、次の「春」に向けた仕込み時が近づいているかもしれません。
日本市場:長き冬を越え「初夏」へ向かう正常化
日本は、30年に及ぶ歴史的な長さのデフレ「冬」を完全に脱し、世界でも稀に見る独自のフェーズに入っている状態だと思っています。
- フェーズ: サイクル上の「初夏(拡大期)」。
- 状況: 日銀がマイナス金利を解除し、金利のある世界へ正常化を進めています。
企業統治(ガバナンス)改革や賃上げのサイクルが回り始めており、JTCの株価評価も構造的に変化しています。
米国が引き締めの出口を探る中、日本は緩やかな引き締めの入り口におり、相対的な強さを維持している局面です。
今後の日本株の見通しについてはまた別記事でも詳しく触れていきたいと思います。

米国市場は2022年に株価が底を打ち、そこから強気相場入りして約4年が経過、これがどこまで続くか注目です。日本株は上記の通りインフレが加速しつつあるフェーズで株価は数年に渡り上昇を続けており、今後の動向には個人的にとても注目しています。
結論:予知ではなく「現在地の把握」に注力すべし
「今が確実にどのフェーズにいるか」や「このフェーズがいつまで続くか」を正確に当てることは、プロの投資家でも不可能なことです。
しかし、以下の情報を把握することで「およそこのあたりだろう」という仮設を立てることはできます。
- 今、中央銀行は金利を上げているのか、下げているのか?
- 世の中のニュースは総悲観(冬)か、総楽観(夏)か?
- VIX指数などの指標はパニックを示しているか?
「米国は晩秋で少し警戒が必要だが、日本は初夏の活気がある」といった「現在地を把握しようとする努力」こそが、自身の資産を守り・育てるための重要なスキルになっていきます。
また、このスキルはただ市場を眺めているだけではなかなか身に付かないので、実際に投資を行いながら身をもって習得していく必要があると思っています。
最後に、本記事では書ききれなかった内容も含め、経済のサイクルをとても分かりやすく解説した素晴らしい動画があるので共有しておきます。
約30分で、経済の仕組みがまるっと分かる、超優良動画です。お時間ある際に見てみてください。
30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio

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