【導入:朝7時の行列と、リボ払いキャッシングの震える指】
かつての私は、「期待値」という言葉を全く間違った場所で使っていました。20代から30代半ばまで、私の休日の主戦場はパチスロホールと競馬場でした。
パチスロでは設定判別のために朝早くから並び、タバコの煙の中でわずかな「高設定」を掴もうとしのぎを削る日々。イベント日には数百人の列に加わり、狙い台を確保しても確証はない。当たりが引けず「低設定か?」と疑いながらも、席を立った直後に別の人に当てられる「おカマを掘られる」恐怖から、際限なく現金を投入し続ける。結果、1日で10万円超を失うこともザラでした。
競馬でも、万馬券を的中させた瞬間の快感が忘れられず、予想情報の乏しいレースにまで手を出していました。メインレースで大勝負して外れ、頭に血がのぼって最終レースでさらに突っ込む。財布を空にして帰るパターンが常態化していました。
勝てば贅沢をし、負ければ取り戻そうとさらに注ぎ込む。ついに負け分を補填するためにカードの**「リボ払いキャッシング」**に手を染めました。震える指でATMにカードを挿入し、暗証番号を入力する。驚くほどあっさり数万円が手渡される。後日、スマホ画面で膨らんでいく支払い残高を見た時の、あの背筋が凍る感覚は今でも鮮明に思い出せます。
「自分は一体、何をやっているんだ……」
都内私立難関大学を卒業し、大手老舗JTCに勤務。表向きの肩書きとは裏腹に、私はギャンブル依存という底なし沼に沈みかけていました。

【転換点:ギャンブルと投資、その決定的な「差」】
そんな私が「資本投資」の世界に出会い、驚いたことがあります。それは、ギャンブルで培った「データ分析」や「期待値」の思考、そして「攻め所・引き所」という勝負勘が、投資の世界では最強の武器になるということでした。
しかし、決定的な違いが一つだけあります。それは**「期待値の置き場所」**です。
ギャンブル(パチスロ・競馬): 胴元が必ず20〜25%を差し引く**「マイナスサム・ゲーム」**。参加した瞬間に期待値は100%を下回り、長期的には必ず資産が削られる構造です。
グローバル投資(世界経済): 人類の創意工夫と人口増加に伴い、世界経済は成長を続けます。この波に乗る投資は、短期的には浮き沈みがあっても、長期的には**「プラスサム・ゲーム」**となります。
「朝からパチスロ台を奪い合い、競馬新聞を睨み続けていたあのエネルギーを、この成長の波に向けたらどうなるか?」
この気づきが、私の脳内のドーパミンを書き換えました。「一時の当たり」を追う興奮を捨て、「複利で資産が増えていく」という、静かでありながらダイナミックな快感へとシフトチェンジしたのです。

【実践:2,000万円を投じた「期待値」への信頼】
2020年代、私は長年勤めた老舗JTCを退職し、早期退職制度による割増金を含む約2,000万円(貯蓄800万+割増金1,200万)の資金を手にしました。
かつての私なら、この大金を手にホールや競馬場へ向かっていたかもしれません。
「頑張った自分へのご褒美だ」と言い訳をしながら。しかし、その時の私はすでに「期待値の場所」を理解していました。
私は資金のうち約1,500万円を、時期を分散させながら米国・全世界のインデックス株や投資信託へと投入しました。パチスロの「高設定」を1日追いかける労力があるなら、世界経済の「右肩上がり」を10年信じることなど、造作もないことでした。
結果として、市場の追い風もあり、2025年には資産5,000万円という、依存症時代には想像もできなかった景色に到達することができたのです。

【結び:依存している熱量は、才能である】
もし今、あなたが何かに依存し、自分を責めているなら伝えたいことがあります。
その**「何かに没頭できる熱量」**は、使い道さえ間違えなければ、人生を劇的に好転させる強力なエンジンになります。大切なのは、その熱量を「搾取される場所」から「成長する場所」へと、ほんの少し移動させることだけです。
私は今でも、たまに友人とパチスロを楽しんだり、有馬記念の馬券を買ったりします。しかし、過去と決定的に違うのは**「依存の有無」**です。
執着が消えた今は、勝っても負けても感情が揺さぶられません。「楽しめたから良し」と思える。すると不思議なことに、なぜか結果として勝ってしまうこともあります。皮肉なものですが、これが「主導権を取り戻した」ということなのかもしれません。
次回は、TOEIC 300点という絶望的な状態から、いかにして「生存のための英語」を身につけ、JTCでの市場価値を爆上げさせたのかをお話ししたいと思います。


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